先日、相棒を見送った。
こんな別れ方になるなんてすごく悲しい。
もっと一緒にいられると思ったのに。
いつもぼくを支えてくれたきみ。
お酒を飲むとき、おいしいものを食べるとき、
一緒に付いて来てくれたよね。
口下手なぼくが居酒屋の大将や女将にすぐ覚えてもらえたのは、魅力的なきみがそばにいてくれたおかげだった。
きみと初めて顔を合わせた時を昨日のことのように思い出すよ。
めったにときめかないぼくだけど、紹介されたときは雷に打たれたようだった。
ほんと、噓じゃないよ。
あれから6年たったんだね。
ぼくがまだ見ぬお酒に目を輝かせているときも、
おいしいものを探して旅路をゆくときも、
8時間くらいしかられて脳みそがカサカサに乾いたときも、
きみはいつもぼくのそばにいてくれた。
きみが気丈に振る舞ってくれたのに甘えて、ぼくはきみを全然いたわってやれなかった。
きみの体がどんどんむしばまれていっているのも知らず、
やがて君は倒れた。
治療はしたけども、完治は無理だと言われた。
だから、うちで最後まで見届けることにした。
つややかだった肌は荒れ、傷ついていくきみ。
そして、
ついにはぼくがきみを抱え上げないといけなくなった。
きみがきみでなくなって、ぼくはきみとお別れしないといけなくなった。
悲しい。
きみを撫でても、かつてのきみは戻ってこない。
ただ在りし日のきみに、思いを寄せるだけ。
でも、悲しむのは今日で終わりにする。
ぼくは前を向くよ。
今までありがとう。
きみのことは忘れない。
どうかゆっくり休んでほしい。
さようなら。
【残念な現実】
「愛用していたかばんを酷使しまくったあげくついに取っ手という取っ手が全部もげてどうしようもなくなった」という話をポエム調の異臭漂う文章にしたらこうなった。
おしまい。