「あれはだめ」「これもだめ」、「やはりこれ!」。
趣味を突き詰めていくと、何も知らずにおもしろがっていたころと比べ、楽しみの幅が狭くなっていくように感じます。
人はそれを「こだわり」というのかもしれません。
いろいろ経験して、自分が「これだ!」と思うものを見つける。
そして人にもおすすめする。 共有してみんなで楽しむ。
いいことです。
でも、自分が認めないものを好んでいる、もしくは自分が思う一定の水準に達していない人に対して、厳しくなることありませんか? 好きなものに対する愛情ゆえの行動だとは思いますが、度が過ぎると危ういことになるんじゃないでしょうか?
日本酒を例につづります。
「あんなもんうまいと思ってんのてめーは酒わかってねーなあ」。そんなケースをちらほらみます。ストレートな文言でなくても、暗ににおわせていたり。
酒をおしりかじり虫しとるワシだって、たとえば居酒屋でリア充男子が女子へ得意げに「俺、けっこう酒詳しいよ」「マニアックな銘柄が好きでさ~」とか言いながら披露している銘柄を聞いていると、ムクムクと暗闇の雲がわき上がることがあります。できれば超波動砲で一掃してしまいたい。そう思うこともある。ただ、その存在は否定しません。
と言うのも、
酒通と呼ばれるレベルの人だって、
みんな最初はにわかというか何も知らなかったわけです。
それを「にわか乙」とか言って揶揄したり全否定すると、
せっかく日本酒に興味を持ち始めた人たちをげんなりさせるというか、間口を狭めると思うのです。そして、「わかっている」人たちだけでサロン化し、新規の呑み手がほとんど入らず業界が縮小、結果滅亡しては本末転倒。ワシもフルーティー&ジューシーなお酒が飲み始めで、当時は燗酒が好きではありませんでした。でもちょっとずつ飲んでいくうちに何かが目覚めていったのです。わしの場合は幸か不幸か、「わしの酒道は間違っていたんだ目からウロコだあんたについていくぜ」みたいな体験はなく、アーイーヤーイオチタオー化しなかったため、節操無しの酒飲みになったのかもしれません。
もうちょっとソフトに、その人たちがおいしいと思う日本酒は尊重しつつ、一緒に楽しむ。ごぶさたしていたトレンド銘柄も、飲むと意外な発見があったりします。そして、自分の好きな酒に興味を持ってもらえるよう徐々に巻き込んでいったらいいんじゃないでしょうか。
間違いを指摘するにしても、
大勢の目に触れるところで晒し者にして自分の優位性をアピールするのではなく、
できることならこっそり教えてほしいなあと。
つらつら書きましたが、
こだわりのある方に申し上げたいのは、
「あなたがおいしいと思っている酒に対して同意はできないが存在は理解する」
それくらいは許してほしいのでございます。
おしまい。