マイナスだったら甘口、
プラスだったら辛口、
と一般的に言われていますが、
飲んだ時に違和感を感じたことがある方もおられるかと思います。
日本酒度はそもそも糖分を測っているのではなく、日本酒の比重を測っています。糖分そのものが目的というより、発酵の進み具合を見る指標の一つと言ったほうがいいかもしれません。
以下、これまでの経験や読んだり聞いた話、研究所などのネット上公開資料を元にまとめてみます。
ざっくり言うと、
日本酒度計と呼ばれる浮きばかりを温度15度のお酒に入れて、
それが酒の中で浮いたり、沈みこんだりするあんばいで、マイナスやプラスを測ります。
よく浮いているとマイナス、
よく沈み込むとプラス。
基準になるプラスマイナス0は4度の純水と同じ比重です。
わかりにくいと思うので、海で泳ぐ時とプールで泳ぐ時を想像してください。
海で泳ぐとプールより体がよく浮くのは、真水に比べ塩が溶け込んで比重が大きいためです。
これを日本酒に置き換えると、
糖分がたくさんある→日本酒度計が浮く(日本酒度マイナス)
糖分が少ない→日本酒度計が沈む(日本酒度プラス)
なので、
酵母が糖分を食べてアルコール発酵してくれると、日本酒度はプラスに近づいていきます。あとアルコールそのものの比重も軽いので、これもプラスに切れる要素になります。
おっ、じゃあ、甘口、辛口が判断できるはずじゃん!どういうことだよ!
では日本酒度と飲んだイメージが一致しないパターンをご紹介します。
酸度が高い(´Д` )
特に酸度が高い(経験上2を超えるくらい)と、日本酒度がマイナスでもそんなに甘く感じません。あまずっぱい酒で日本酒度マイナス2桁はごろごろいます。
ブドウ糖の量が多い( ;´Д`)
もう一つクセモノなのが、
日本酒の中で甘みを感じる物質は、麹菌がデンプンを酵素で分解して生み出します。ブドウ糖のほか、その手前のオリゴ糖やデキストリンといったデンプン寄りの物質がお酒の中には存在します。そして、その中ではブドウ糖が一番甘みを感じます。なのでブドウ糖含有量が多いと、アルコール添加で日本酒度がプラスにキレていたとしても、甘く感じます。
その他(;´Д`A
また「辛口」に関して言えば、アルコールのぴりぴり感や発酵由来の炭酸しゅわしゅわ感もドライに感じる要素になりそうです。あと、どぶろくに近い濁り酒も比重が大きそうなんで、そんなに甘くなくても日本酒度がマイナスに作用するかと。
結局飲まないとわからないってこと?
指標は他にもあります(=゚ω゚)
酒類総合研究所が、上記のブドウ糖濃度や酸度を組み込んで、甘辛推定値なるものを発表しています。
2005年発行の酒類販売管理研修通信から引用します。
計算式は、
甘辛推定値(Y)
=ブドウ糖含有量(S)―酸度(A)
ブドウ糖含有量(S)は、g/100ml。
甘口(1・9以上)、
やや甘口(1・8~1・1)、
やや辛口(1・0~0・3)、
辛口(0・2)
と分類するようです。
また酒税を管轄する国税庁は、各県で出来た日本酒の甘辛度・濃淡度の平均値を毎年算出しています。
こちらは日本酒度と酸度に、ややこしい係数?を足したり引いたりかけたりして算出しています。
国税庁のサイトからの引用を踏まえて紹介すると、
甘辛度=193593/(1443+日本酒度)-1.16×総酸-132.57
濃淡度= 94545/(1443+日本酒度)+1.88×総酸- 68.54
甘辛度の数値が高い(低い)ほど甘口(辛口)、濃淡度の数値が高い(低い)ほど濃醇(淡麗)であることを示しています。
この計算式は、国税庁醸造試験所(今の酒類総合研究所)の佐藤信博士らのグループが提唱したもので、醸協・第69巻・774-777(1974年)で発表されています。
しかし、これらが市販品にあまり普及してないところをみると、手間がかかるからなんかのう( ;´Д`)
なお、おっちゃんの経験上、「辛口くれ」と言われた場合、日本酒度が+15までいくと、辛口として人におすすめします。(´Д` )
あと辛口というのは、甘口に対して、甘くない酒を意味する言葉です。水のように滑らかな酒(スカスカという意味ではない)だけではなく、糖分はあまり無いがアミノ酸などのうまみが豊富な酒まで幅が広いです。
余談ですが、仕込みの初期はアルコールがあんまり無い&エキス分が濃いのでボーメと呼ばれる単位で測り、発酵が進んでくると日本酒度に切り替えます。ボーメ度の1は、日本酒度のマイナス10度に相当します。ボーメは、フランスの化学者、アントワーヌ・ボーメが由来だそうです。
おしまい。
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